東京映画日記

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映画「ビールストリートの恋人たち」感想

映画「ビールストリートの恋人たち」感想

いまだに続く人種差別というヘビーなテーマをきらびやかで美しい映像と、二人の恋人の視点で切り取った素晴らしい作品

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作品データ

原題 If Beale Street Could Talk 製作年 2018年 製作国 アメリカ 配給 ロングライド 上映時間 119分 映倫区分 G

スタッフ

監督 バリー・ジェンキンス
製作 アデル・ロマンスキー サラ・マーフィ バリー・ジェンキンス デデ・ガードナー ジェレミー・クレイマー
製作総指揮 ミーガン・エリソン ブラッド・ピット サラ・エスバーグ チェルシー・バーナード ジリアン・ロングネッカー マーク・セリアク キャロライン・ヤーツコー
原作 ジェームズ・ボールドウィン
脚本 バリー・ジェンキンス
撮影 ジェームズ・ラクストン
美術 マーク・フリードバーグ
衣装 キャロライン・エスリン=シェイファー
編集 ジョイ・マクミロン ナット・サンダース
音楽 ニコラス・ブリテル
音楽監修 ゲイブ・ヒルファー

キャスト

キキ・レイン ティッシュ・リヴァーズ
ステファン・ジェームス ファニー(アロンゾ・ハント)
コールマン・ドミンゴ ジョーゼフ・リヴァーズ
テヨナ・パリス アーネスティン・リヴァーズ
マイケル・ビーチ フランク・ハント
デイブ・フランコ レヴィー
ディエゴ・ルナ ペドロシート
ペドロ・パスカル ピエトロ・アルバレス
エド・スクレイン ベル巡査長
ブライアン・タイリー・ヘンリー ダニエル・カーティ
レジーナ・キング シャロン・リヴァーズ
フィン・ウィットロック ヘイワード

解説

「ムーンライト」でアカデミー作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス監督が、1970年代ニューヨークのハーレムに生きる若い2人の愛と信念を描いたドラマ。ドキュメンタリー映画私はあなたのニグロではない」の原作でも知られる米黒人文学を代表する作家ジェームズ・ボールドウィンの小説「ビール・ストリートに口あらば」を映画化し、妊娠中の黒人女性が、身に覚えのない罪で逮捕された婚約者の無実を晴らそうと奔走する姿を描いた。オーディションで抜てきされた新人女優キキ・レインと、「栄光のランナー 1936ベルリン」のステファン・ジェームスが主人公カップルを演じ、主人公を支える母親役で出演したレジーナ・キングが第91回アカデミー賞助演女優賞に輝いた。

映画.comより引用

予告編

[鑑賞データ]

2/23(土)14:25~ TOHOシネマズシャンテにて字幕版を鑑賞。

客席は公開二日目でほぼ満席でした。

テーマ「もしビールストリートが話せれば」

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映画.comより引用

 

hulu

あらすじ・感想・解説

アカデミー賞助演女優賞にこの作品からレジーナ・キングが見事輝きましたね。
ムーンライトの時は青、紫、白といった寒色系の色彩が美しかった映画ですが、この映画は黄色とかオレンジ、赤などの暖色系の色がとても美しい映画でした。

 

ネタバレあらすじ

※一応時系列順に書いてますが、映画は過去パートと現在パートをいったりきたりします。

お話は1970年代のニューヨーク・ハーレム幼馴染のティッシュ(キキ・レイン)とファニー(ステファン・ジェームス)は共に育ちました。
ティッシュは百貨店の香水売り場で働いて、ファニーはいろんな仕事をしながらアーティストとして生活しています。
そしてティッシュが19歳、ファニーが22歳になった時二人は結ばれ子供ができました。
しかし、ティッシュが妊娠したことをファニーに告げた場所は刑務所の面会室のガラス越しでした。
ファニーはティッシュと買い物をしていた時に、白人警官に目をつけられて後日ヒスパニックの女性がレイプされるという事件の犯人に仕立てあげられ逮捕されてしまっていたのです。
ティッシュのリヴァーズ家と、ファニーのハント家は両家とも裕福とは言えないですが、父親同士が仲良く付き合いがあります。しかし、母親同士や姉妹たちは微妙な関係です。
リヴァーズ家は母親を始めフランクな性格で、ハント家の態度にも寛容な態度を示しているのですが、ハント家の女性は敬虔なクリスチャンで他の黒人家庭とは違うと思っていてリヴァーズ家を下に見ています。
ティッシュはファニーに妊娠したことを告げた夜に家族にもそのことを伝えました。リヴァーズ家の人々は喜び、ハント家も家に呼んでファニーの子供を授かったということを伝えようとキキに提案します。
そして、ハント家の父、母、ファニーの妹たちがきてそのことを伝えると、父親同士は喜び盛り上がるのですが、ハント家の女性たちは浮かない様子。
ファニーは警察に捕まったままですし、生活力がないのに子供は誰がそだてるの?とハント夫人は怒ります。そしてあろうことかティッシュに近づき「お腹にいる子は精霊が殺してくれるわ」という酷い言葉をかけてしまいます。夫のフランクは激昂し平手打ちをします。一旦ティッシュの父ジョーゼフがフランクを連れ出しました。
そして、残った女たちは少し言い合った後ハント家の女性たちを追い出しました。
両家による祝福の宴になる予定が、散々な夜になってしまいました。
ハント夫人はファニーが逮捕されたことを恥じている上、見て見ぬふりをしています。
そこでティッシュの母シャロンレジーナ・キング)が立ち上がります。
ティシュと共にファニーの弁護士と面会し、状況を確認します。
ファニーにはティッシュとファニーの親戚と会っていたというアリバイがあるのですが、その親戚も冤罪で逮捕されて刑務所から帰ってきたばかりということで、警察には関わりたくないらしく証言を得られず行方をくらましてしまっています。
ファニーは被害者の面通しで指をさされて捕まってしまったので、冤罪を証明するには本人に証言してもらう必要があるということを伝えられます。
それなら被害者に会いに行けばいいのですが、被害者はプエルトリコに帰ってしまっていて、証言を取るにはプエルトリコに直接行って本人を説得するしかないということを言われます。
しかし、両家の経済力では渡航費用を捻出できません。
そこでジョーゼフとフランクは港に入ってくるブランドものの洋服をバレない量で盗み出し、それを売りさばくという方法でなんとかお金を捻出し、シャロンに託しました。
シャロンは生まれて初めてニューヨークを出ました。
被害者の面倒を見ている人間は地元の顔のヤクザで、シャロンはなんとか懇願して被害者に合わせてもらうことを取り付けました。
被害者と対峙するシャロン。説得を試みましたがシャロンは口下手です。説得は失敗し何も得られないままシャロンはハーレムへ帰ってきます。
父親がいなくても生まれてくる子供はまってくれませんので、子供を育てる準備を家族はします。 生まれた子供は男の子でした。
少し大きくなった子供を連れたティッシュはファニーの面会に行きました。

異人種感だけではない差別意識

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映画.comより引用

このお話の結構きついところは、ただでさえアメリカではきつい黒人に対しての差別意識だけではなく、同じ黒人同士にも差別意識が存在することです。
しかもそれがご近所さんで、その子供たちが結婚するのにそのわだかまりを解けないところです。
こういう意識って確かに日本の中にもあると思います。地域に対してであったりとか、出自に対してとか、もっと細かく能力だとか容姿など様々な理由で人は差別してしまうんです。
知らず知らずのうちにひょっとしたら自分もやっているかもしれません。
それが如何に無意味で虚しいものであるのかを、こういう映画でも観て襟を正して行きたいですね。

ものすごく特徴的な色彩感覚と印象的な顔のアップ

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映画.comより引用

これも監督インタビューによると、すごく精神的に辛いことが多い話なのに、画面はいつも美しくてこれはどんなにひどいことが起こっていても世界は美しいものであるというメッセージみたいですが、本当にそうですよね。
また、この映画では何かを人物が何かを覚悟した時や、感情が溢れ出しそうな時など印象的な顔のアップを多用しています。最近アップ多用する映画が多いですが、すごく印象的ですね。

原作者ジェームズ・ボールドウィン

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映画.comより引用

原作はジェームズ・ボールドウィンという黒人作家ですが日本ではほとんど知られていなくて、翻訳もあまりされておらず、ようやく今回の映画化に当たって本作の翻訳が出たみたいです。
※以前は「ビール・ストリートに口あらば」というタイトルでオムニバス形式の1話として日本で出版されてたみたいです。
監督インタビューによるとアメリカでも知るひとぞ知るみたいな作家だけど評価は高い作家で、去年日本で公開されたドキュメンタリー映画「私はあなたの二グロではない」の原作者でもあります。
若い頃パリに移り住んでヘミングウェイスコット・フィッツジェラルドと交流を持ったようですが、帰国後は黒人の公民権運動に傾倒していったみたいですね。
キング牧師マルコムXと交流を持っていたようですが、二人とも暗殺されてしまったことにより大きなショックを受けたようですね。
また、私生活ではゲイだったようです。時代としては2重に迫害されていてもおかしくないですね。そういったこともあってフランスで暮らすことも多かったんでしょうか。。

関連

原作小説です。この映画にあわせて再翻訳されて出版されたようですね。

 

タイトルにインパクトがありますね。ドキュメンタリー映画です。

 

バリー・ジェンキンス前作で、アカデミー賞作品賞受賞作です。マハーシャラ・アリがすごく良い役でしたね。

 

 

まとめ

とにかく陰湿でやりきれないけど、美しく生きていく力をくれる映画でした。

オススメ度

(★★★★★)5/5

こんな人にオススメ

・嫌っている人がいる人
・自分は恵まれてないと思っている人
・こだわりが強すぎる人