東京映画日記

主に映画のレビューについて書きます。

映画「グリーンブック」感想

映画「グリーンブック」感想

差別を乗り越えた異人種間の友情を描くドタバタ珍道中。実話ベースの素晴らしい映画でした。

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作品データ

原題 Green Book 製作年 2018年 製作国 アメリカ 配給 ギャガ 上映時間 130分 映倫区分 G

スタッフ

監督 ピーター・ファレリー
製作 ジム・バーク チャールズ・B・ウェスラー ブライアン・カリー ピーター・ファレリー ニック・バレロン
製作総指揮 ジェフ・スコール ジョナサン・キング オクタビア・スペンサー クワミ・L・パーカー ジョン・スロス スティーブン・ファーネス
脚本 ニック・バレロンガ ブライアン・カリー ピーター・ファレリー 撮影 ショーン・ポーター
美術 ティム・ガルビン
衣装 ベッツィ・ハイマン
編集 パトリック・J・ドン・ビト
音楽 クリス・バワーズ
音楽監修 トム・ウフル マニッシュ・ラバル

キャスト

ビゴ・モーテンセン トニー・“リップ”・バレロン
マハーシャラ・アリ ドクター・ドナルド・シャーリー
リンダ・カーデリニ ドロレス
ディミテル・D・マリノフ オレグ
マイク・ハットン ジョージ
セバスティアン・マニスカルコ
P・J・バーン

解説

人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の2人が旅を続けるなかで友情を深めていく姿を、実話をもとに描き、第91回アカデミー作品賞を受賞したドラマ。1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒として働くトニー・リップは、粗野で無教養だが口が達者で、何かと周囲から頼りにされていた。クラブが改装のため閉鎖になり、しばらくの間、無職になってしまったトニーは、南部でコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリーに運転手として雇われる。黒人差別が色濃い南部へ、あえてツアーにでかけようとするドクター・シャーリーと、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに、その旅に同行することになったトニー。出自も性格も全く異なる2人は、当初は衝突を繰り返すものの、次第に友情を築いていく。トニー役に「イースタン・プロミス」のビゴ・モーテンセン、ドクター・シャーリー役に「ムーンライト」のマハーシャラ・アリ。トニー・リップ(本名トニー・バレロンガ)の実の息子であるニック・バレロンガが製作・脚本を手がけ、父とドクター・シャーリーの友情の物語を映画化した。監督は、「メリーに首ったけ」などコメディ映画を得意としてきたファレリー兄弟の兄ピーター・ファレリー。アカデミー賞では全5部門でノミネートされ、作品賞のほか脚本賞助演男優賞を受賞した。

映画.comより引用

予告編

[鑑賞データ]

3/1(日)20:45くらい 新宿バルト9にて字幕版を鑑賞。

客席は満席でした。

テーマ「互いを認めれば差別なんてなくなる」

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映画.comより引用

 

hulu

あらすじ・感想・解説

アカデミー賞作品賞助演男優賞脚本賞の3冠に見事輝きましたね。
映画を観る前から予告編の色彩感覚やデザイン、音楽が素晴らしくてずっと楽しみにしていましたが、アカデミー賞を受賞したことでますます楽しみでした。
まあこんな映画悪いわけないですよね。



ネタバレあらすじ

主人公はニューヨークのナイトクラブ「コパ・カバーナ」で用心棒として働く粗野で乱暴ですが結構クレバーなイタリア系のトニー・“リップス”・バレロンガ(ビゴ・モーテンセン)です。トニーは家族思いで優しいところがありますが、黒人が嫌いです。
お話はクラブの改装でトニーが一時レイオフされるところから始まります。
トニーはその日暮らしで適当に生きています。そして職にあぶれる何ヶ月かを食いつないでいかなければなりませんが、お金に余裕はありません。どうしようか思案していると知り合いから「ドクター」の運転手をする仕事があるという話が舞い込んできます。 渡に船とばかりに面接に行くとそこはカーネギーホールでした。
劇場内のスタッフにドクターの運転手の面接に来たことを告げると、上階の住居スペースだと教えられます。
教えられたフロアに着くと、面接を受ける人が集まっていました。
書類に記入し、自分の番になり部屋に入るとそこに現れたのはアフリカの王族のような服を身にまとった黒人ピアニアスト、ドクター・ドン・シャーリー(マハーシャラ・アリ)でした。
ドクターという称号はシャーリーが博士号を持っているところからきたものです。
ドクターの運転手という言葉からてっきり医者の運転手をするものだと思い込んでいたトニーは面食らっていると「黒人と働くことに問題が?」と問いかけてきました。
問題はないと答えましたが、詳しい仕事内容はというと
・週休100ドル。
・8週間の間中西部から南部を回るツアーの運転手をすること。
・運転手業務だけではなくスケジュール管理や細々したマネージャー業務も兼ねていること。
という条件でした。
しかし、トニーはそんな小間使いみたいなことはできないし、それほど長期しかも南部へ行くならば、週休125ドルじゃないとできないから他をあたってくれと自ら仕事を降りました。
当時の黒人差別のひどい南部へ行って黒人のマネージャー業務をする過酷さをトニーは理解していたのです。しかもトニーは黒人が嫌いです。
しかし、ニューヨークではトニーの「問題解決能力」の高さが有名だったのです。過酷な南部のツアーにはその能力が必要でした。
翌朝トニーの奥さん宛にシャーリーは電話をして、その反応を聞いてトニーの採用をトニーの条件で決めました。
出発の日前金であるギャラの半分とともに渡されたのが「グリーンブック」です。これは、南部で黒人が泊まれる場所や利用できるサービスがある場所を示したガイドブックでした。
クリスマスまでには戻るとドロレスに言い残し一行は出発しました。
トニーの運転する車にシャーリーが、もう一台はドクター・シャーリー・トリオのチェロ奏者 オレグとアップライトベースのジョージが運転する車で出発しました。
根アカな性格のトニーはやたらとシャーリーに話しかけますが、シャーリーは面倒がってあまり話したがらない様子。幼い頃からピアノの才能を持っていたシャーリーはロシアでその腕を磨き、上流階級の人々と接してきたので、ニューヨークの下町ブルックリンからほとんど出たことがないトニーとは話が合わないのです。
無事演奏会場に着くとそこで初めてシャーリーの演奏を聴いたトニーは感動し、そのことを手紙で妻ドロレスに素直に伝えます。
また次の会場へ車を走らせた時、流れる景色にトニーはアメリカが美しい国であることを初めて実感します。カーラジオからはリトル・リチャードの音楽が流れてきます。同じ黒人であるリトル・リチャードの音楽をどう思うかとシャーリーに聞いてみますが、シャーリーはロックンロールをほとんど聞いたことがなく、そしてほとんどの黒人が知っていることをシャリーは知らないことにトニーは驚きます。
ツアーは続きますが、ある会場では用意することを依頼していたスタインウェイのピアノが用意されておらず、会場の担当がそれを用意しないのはニガーのためにわざわざ用意する必要はないという人種差別的な理由でした。トニーは担当を殴りすぐさま用意させました。
シャーリーはいつも孤独でした。
ある日トニーが一人で部屋でピザを食べていると、ジョージが呼びにきます。
シャーリーが白人のバーで絡まれていたのです。
なんとかその場を切り抜けましたが、シャーリーの音楽的才能と予想以上にひどい差別にトニーはだんだんシャーリーという人物に魅力を感じてきました。
イタリア系も何かと差別を受けている人種だったということもあるのでしょう。
その後も運転していると警察に呼び止められて、不当な職務質問を受けるとトニーは思わず警官を殴ってしまい、警察署に二人は勾留されました。
そこはシャーリーがロバート・ケネディに手を回してもらって釈放されましたが、思った以上に差別が酷いという現実を知ります。
ドライブインで休憩しているとトニーはドロレスに手紙を書いています。シャーリーがそれを見るとひどい文面です。
それを不憫に思ったのか、詞的な愛を綴った文面を考えそれをトニーに書かせました。
後日受け取ったドロシーはそれをみて感激しました。
またある日夜中に呼び出されると、今度は警察に殴られ裸のままで拘束されているシャーリーが見つかりました。傍らには裸の白人男性も拘束されています。
シャーリーはゲイでした。
性差別もひどい時代で、これはトニーにも隠しておきたかったことでした。
しかし、トニーはニューヨークのナイトクラブで働いていていろんな趣味嗜好の人間を見てきているので、意に介さない様子でした。
この旅でトニーはシャーリーに庶民が知っているようなことを教え、シャーリーは人としてのマナーをトニーに教えることで二人の友情は深まっていきました。
そして最後のツアー先に着きました。
そこでは、シャーリーだけ楽屋が物置に通されましたが慣れっこです。そこで準備をしましたが、そのレストランが演奏前の食事を黒人だからという理由で断ってきたのです。
どんな差別にも笑顔で返していたシャーリーですが、ここは意地を張りました。ここで食事ができないのなら演奏はしないと宣言したのです。支配人はなんとかなだめてきましたが、食事は断固させないということだったので、その場からシャーリーは去りました。 その夜トニーとシャーリーは黒人だけが集うバーにいました。ステージでは黒人のバンドがブルースを演奏しています。
バーテンダーの女性からおめかししてどうしたの?と聞かれ、その問いに人を見た目だけで判断しちゃいけないと答えました。トニーは横からこいつは世界一のピアニストだぜ!と口を挟んできたので、バーテンダーはじゃああのピアノで証明してとステージにあるピアノを指さしました。
やおらピアノに向かいいつものポップス寄りのピアノのイントロを弾き始めたのをやめて、ショパンを弾くと全員がシャーリーに見とれました。弾き終わると拍手の嵐。そこに先ほどまで演奏していたバンドが加わりブルージーなロックのナンバーを演奏しました。
帰りの運転。あと少しで、ニューヨークですがひどい雪です。運転しているとパトカーに車を止められます。
また差別的な職務質問が持ってると思うとうんざりしましたが止まらないわけにはいきません。
車を止めると警官が近づいてきます。すると警官は言います。「車が傾いてる。後輪がパンクしてるんじゃないのか?」
本当にタイヤはパンクしていました。
警官に注意喚起を手伝ってもらって、タイヤを無事交換し終わり警官に礼を言ってその場を去ります。
雪はますますひどくなります。トニーは半ばあきらめ顔で、泊まって明日帰ろうと言いますがクリスマスまでトニーを家族の元に戻すという約束をのをシャーリーは守りたいのです。
トニーは後部座席で眠り込んで、運転はシャーリーが行いトニーの家に着きました。
トニーは寄ってけよと言いますが、シャーリーは一人で運転して帰ってしまいます。
自分の部屋に戻ると執事がいつもと変わらず仕事をしていましたが、クリスマスなので家に帰しました。
トニーの家では親戚一同パーティが開かれていますが、親戚がトニーからぼったくった質屋まで連れてきてしまします。扉を閉じようとした時後ろに立っていたのはシャーリーでした。
家に招かれドロレスとシャーリーがハグします。
その時ドロレスが一言「手紙をありがとう」
皆が笑顔でクリスマスをすごしましたとさ。

作品の時代背景

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映画.comより引用

1960年代の話ですので、黒人の公民権運動が盛んな頃ですね。この頃アメリカ南部では過去に黒人奴隷制度を支持していた地域ということもあって黒人差別がひどく、スターミュージシャンでもステージから引きずり降ろされリンチにあったとか、「あなたが入ったからプールの水を全部抜かないといけない」といわれたとか、とにかく有名無名問わず黒人がひどい差別を受けていた時代です。

ドクター・ドン・シャーリーについて

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映画.comより引用

この人生まれはジャマイカだったみたいで、基本的にはクラシックベースのピアニストです。
幼い頃からすぐにその才能を見抜かれ、ロシアで技術を学び8ヶ国語を操る天才だったようです。
このころの黒人ミュージシャンとしては特異な存在のため、他のミュージシャンとのセッションをほとんど行っておらず、そのためあまり有名ではないようです。
この映画でのキャラ設定では、怒って暴力をすぐふるってしまうトニーを留置場で説教するシーンがあります。不当な暴力に対して暴力で返すことに「人としての尊厳を失う。それは負けたことと同じだ」と返す様は、おそらく公民権運動で非暴力を貫いたマーティン・ルーサー・キング牧師をオマージュしたキャラクターなんじゃないでしょうか?

トニー・“リップ”・バレロンガについて

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映画.comより引用

この人はニューヨーク・ブルックリン生まれのイタリア系アメリカ人です。
トニーが用心棒として働いているクラブ「コパカバーナ」は世界的に有名で、時の大物も頻繁に出入りするようなクラブだったようです。
そこで一目置かれているトニーもやっぱりその世界では有名だったんでしょうね。
この時代のブルックリンに住む人の様子を描いた映画「ブルックリン」という映画がありますが、当時はイタリア系やアイルランド系といった比較的人数が少なく、ブルーカラーの仕事をしている人たちが多く住む住む地域だったようで、黒人の境遇よりはひどくないですが、同じように差別されていたようです。
また今回の映画はこのトニーの息子さんのニックが共同脚本を書いているようですね。

関連

ピーター・ファレリー作品といえばやっぱこれですね。

 

この作品でもマハーシャラ・アリは好演していました。俳優ってすごいですね。

 

ヴィゴ・モーテンセンといえばやっぱこれですね。

 

 

まとめ

音楽がいいし美しい景色も見られるので絶対劇場で観たほうがいいです。素晴らしいバディロードムービーでした。

オススメ度

(★★★★★)5/5

こんな人にオススメ

・バディものが好きな人
ロードムービーが好きな人
・何かに虐げられてる人