東京映画日記

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池松さんのアノ姿が見どころです。映画「斬、」感想

映画「斬、」感想

キレイ事だけでは済まない、激動の時代の血塗られた通過儀礼の話。池松くんのアノ姿が見どころです。

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作品データ

製作年 2018年 製作国 日本 配給 新日本映画社 上映時間 80分 映倫区分 PG12

スタッフ

監督 塚本晋也
製作 塚本晋也
脚本 塚本晋也
撮影 塚本晋也 林啓史
美術 遠藤剛
衣装 宮本まさ江
編集 塚本晋也
音楽 石川忠
サウンド 北田雅也
殺陣 辻井啓伺
時代考証 大石学助
監督 林啓史

キャスト

池松壮亮 都築杢之進
蒼井優 ゆう
中村達也 源田瀬左衛門
前田隆成 市助
塚本晋也 澤村次郎左衛門

解説

「野火」「六月の蛇」の塚本晋也監督が、池松壮亮蒼井優を迎えて描いた自身初の時代劇。250年にわたって続いてきた平和が、開国か否かで大きく揺れ動いた江戸時代末期。江戸近郊の農村を舞台に、時代の波に翻弄される浪人の男と周囲の人々の姿を通し、生と死の問題に迫る。文武両道で才気あふれる主人公の浪人を池松、隣人である農家の娘を蒼井が演じ、「野火」の中村達也、オーディションで抜擢された新人・前田隆成らが共演。「沈黙 サイレンス」など俳優としても活躍する塚本監督自身も出演する。2018年・第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。

映画.comより引用


予告編

[鑑賞データ]

12/18(火)21:10 ユーロスペースにて鑑賞しました。

客席は2割くらいでした。

テーマ「通過儀礼

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映画.comより引用

 

hulu

多少ネタバレあらすじ・雑感

ムービーウォッチメンの課題映画ですね!

江戸時代の末期の農村を舞台にした話で、通過儀礼の話なんだと思います。久々の時代劇でしたがタイトな長さで、メッセージもわかりやすく見やすい作品でした。

 

お話をネタバレ全開で適当に書いておくと、江戸近郊の農村で農家の手伝いをしたり、農家の息子(市助)に剣術の稽古をつけたりながら居候をしている都築は江戸末期の時代の移り変わりを感じながら過ごしていました。

農家の娘ゆう(蒼井優)と都築は惹かれあっていましたが、結ばれてはいないようでいつか来る旅立ちに備えていました。

ある日、浪人同士と思われる果し合いの現場を目にしますが勝敗の決着を悟ると、その場を後にします。その果し合いに勝利した澤村(塚本晋也)は、その後稽古をしている都築と市助を目にし、声をかけます。

曰く、「近々あると思われる大きな戦に備えて江戸から京都へ向かうので一緒に戦おう。」

侍として、立身しようと思っていた都築はその話に乗り、また市助も農家出身でありながら都築との稽古で自信を付けているため一緒に行こうということになります。

出発前日、村には怪しい影が。

それは職にあぶれ野盗のようになった野武士たちの集団でした。

都築は穏やかな物腰でリーダーと思しき男源田(中村達也)と話し、夜には酒を酌み交わしてなんとかその場を取り持ちます。

粗野な集団ではありますが、悪いものからしか盗らないという彼らは、その村の近くでしばらく過ごすようでした。

都築は深夜眠れず身を起こすと、外にはゆうが様子を見にきています。

しかし、壁越しに少し触れ合っただけで翌朝を迎えます。

翌日礼を言って都築は旅立とうとすると、急に倒れこんでしまいました。高熱が出ていたのです。出発は1日延期になりました。

決めた覚悟の出鼻をくじかれた市助は苛立ち、木刀を振り回しながら表を歩いていると運悪く野武士の集団に出くわします。

からかわれた市助はつい手を出してしまい壮絶な返り討ちにあってしまいます。 同じ組のものがやられたとあっては黙っていられないと澤村は報復に行きます。源田一人を取り逃がしますが、「おそらくもうこれで大丈夫」の一言に村は沸き立ちます。

しかし、その夜市助の一家が仕返しで惨殺されてしまいます。 報復合戦を避けるようにこれで終わりにしようという都築に対して、今度こそ全員を始末するためにもう一度野盗のところにいくという澤村。ひとまず二人で向かおうとすると弟市助を殺されたゆうも付いてきていました。

ねぐらに到着すると、人を殺したことがない都築に一皮向けてもらいたい澤村は抜いた刀を地面に突き刺したところで源田たちが帰ってきました。

そして帰るように促していたゆうが野盗に捕まっていました。

押さえつけられる都築と犯されかけるゆう。その時あっという間に澤村は野盗たちを全員切って捨てました。

最後まで都築は野盗を切れませんでした。

その夜、都築は江戸行きのことを考えられなくなるほど激しく動揺しましたが、一皮剝ける好機と捉えた澤村は翌朝自分と一緒に江戸へ向かうか自分に切られるかどちらかを選べと言い去ります。

翌朝、都築を迎えにいくと都築は姿を消していました。 おそらく山へ逃げたと思われるため、澤村はゆうと後を追います。

近くまで追いついたと思われた時、昨日野党から受けた一撃が澤村の心境に変化を与えます。 自分と果たし合いを行い、勝ったならお前が江戸に行けと言い放ちます。 倒れている都築を見つけた澤村は刀を構えます。

そのただならぬ殺気に、目を覚ました都築と澤村の果たしあいが始まります。

腕はおそらく澤村の方が少し上。先に澤村の一撃が縦に都築の右半身を捉えます。

すんでの所で致命傷を避けますが、万事休す。 しかし交錯した刹那、都築の一撃が澤村を捉え、都築は生きながらえました。

この後都築はどうなったんでしょうか?という感じです。

 

 

凄腕だが老いを感じている浪人の澤村(塚本晋也)が求めているのはおそらく侍としての死に場所でしょう。

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映画.comより引用

 

 

侍としては覚悟も腕も完成されていますが、明らかに全盛期は過ぎて侍として死ねるラストチャンスに賭けている浪人です。 そしてこちらも凄腕ですが、人を切ったこともおそらく女を抱いたこともない浪人の都築(池松壮亮)が求めているのは、侍として世に出ること。

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映画.comより引用

つまり、これから閉じていく侍と、開いていく侍を対比させていると思います。 煮え切らない都築は好きな女を抱くこともできないというのを、オナニーというシーンで表していましたし、好きな女が犯されそうになっているのにその者を切ることができないヘタレで、覚悟もないものが侍として生きてはいけないというのを命を賭けて若者に伝えて、己の武士道を都築に託したんでしょう。 なんというか、生きていくための「覚悟を持て」と塚本監督からビンタをされたような気持ちで見ていましたよ。 あと、この映画何がすごいって殺陣の迫力がすごかったです。

 

 

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映画.comより引用

ただ、別に難癖は付けたくないんですが、映画のルック的にはちょっとテレビっぽいというか映像的なリッチさはあまりなかったのと、田んぼとかもなんか昔の田んぼっぽくないなーと思ってしまいました。

関連

塚本監督作品でグッときたのはこれですね。今回も出演されている中村達也さんが出演されています。

 

塚本監督のこの作品、今huluで観れますね。重要カルト作品です。

 

これ読んでみようかな。。

 

 

まとめ

たるんでいた自分に喝を入れてくれるいい映画でした。

オススメ度

(★★★★)4/5

こんな人にオススメ

・最近自分が弛んでいるなと思う人
・実は時代劇が好きだという人
塚本晋也監督作品ファンの人