東京映画日記

主に映画のレビューについて書きます。

映画「ROMA/ローマ」感想

映画「ROMA/ローマ」感想

誰にでも進められる、生きることとか人への気持ちとか色々考えさせられる映画です。

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作品データ

原題 Roma 製作年 2018年 製作国 メキシコ・アメリカ合作 上映時間 135分

スタッフ

監督 アルフォンソ・キュアロン
製作 ガブリエラ・ロドリゲス アルフォンソ・キュアロン ニコラス・セリス
製作総指揮 ジェフ・スコール デビッド・リンド ジョナサン・キング
脚本 アルフォンソ・キュアロン
撮影 アルフォンソ・キュアロン
美術 エウヘニオ・カバレロ
衣装 アンナ・テラサス
編集 アルフォンソ・キュアロン アダム・ガフ

キャスト

ヤリッツァ・アパリシオ クレオ
マリーナ・デ・タビラ ソフィア
マルコ・グラフぺぺ
ダニエラ・デメサソフィ
カルロス・ペラルタパコ
ナンシー・ガルシアアデラ
ディエゴ・コルティナ・アウトレイToño
ジョージ・アントニオ・ゲレーロフェルミ

解説

ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロン監督が、政治的混乱に揺れる1970年代メキシコを舞台に、とある中産階級の家庭に訪れる激動の1年を、若い家政婦の視点から描いたNetflix製ヒューマンドラマ。キュアロン監督が脚本・撮影も手がけ、自身の幼少期の体験を交えながら、心揺さぶる家族の愛の物語を美しいモノクロ映像で紡ぎ出した。70年代初頭のメキシコシティ。医者の夫アントニオと妻ソフィア、彼らの4人の子どもたちと祖母が暮らす中産階級の家で家政婦として働く若い女クレオは、子どもたちの世話や家事に追われる日々を送っていた。そんな中、クレオは同僚の恋人の従兄弟である青年フェルミンと恋に落ちる。一方、アントニオは長期の海外出張へ行くことになり……。2018年・第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で、最高賞にあたる金獅子賞を受賞。第91回アカデミー賞でも作品賞を含む同年度最多タイの10部門でノミネートされ、外国語映画賞、監督賞、撮影賞を受賞した。

映画.comより引用

予告編

[鑑賞データ]

2/24(日)11:00くらい NETFLIXにて字幕版を鑑賞しました。

テーマ「大人の世界/ありがとう」

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映画.comより引用

 

hulu

ネタバレあらすじ・感想

夏に野球(読売主催試合)を見られるという理由でVODサービスはhuluを選択しているんですが、ムービー・ウォッチメンの課題映画になってしまったんでね。NETFLIXに緊急加入して鑑賞することにしました。
とんでもなく美しくていい映画でしたよ。
アルフォンソ・キュアロン監督の少年時代の自伝的な映画ですが、主人公はその家で働いている原住民系の女性家政婦のクレオ(ヤリッツァ・アパリシオ)です。
第91回アカデミー賞で監督賞、撮影賞、外国語映画賞の3つを受賞しましたね!



ネタバレあらすじ

お話は1971年のメキシコシティのコロニア・ローマに住むある医者の家庭(旧宗主国系の白人)。やんちゃな子供たちと少しヒステリックな母ソフィアとの軋轢もありますが、淡々と日々を過ごしています。
家政婦の1日は大変で朝早く目覚めると、朝食を用意し子供たちを起こして回ります。
長男、次男、長女に朝食を食べさせて送り出すと、今度は三男と父親に朝食を配膳します。
綺麗で大きい家ではありますが人手が足りていないのか、玄関先には犬の糞がしょっちゅう落ちて父親がそれを踏んづけてしまい、母がクレオを叱りつけます。
そしてベッドメイキングや掃除洗濯、夕方には子供達を迎えに行くなどやることはたくさんあります。
夜は、いつまでも明かりをつけているとソフィアに怒られるので、アデラと一緒に体操をして寝ます。
子供達はクレオにとても懐いています。
父親はまた出張に出かけて行きました。
休みの日、同僚のアデラとともにダブルデートに出かけます。クレオの相手はアデラの彼氏ラモンの従兄弟のフェルミンです。
アデラたちと一緒に映画館へ入ろうとすると、お金のないフェルミンは晴れているし公園にでも行こうといい出しますが、雨が降ってきてフェルミンの部屋に行くことになります。
習っている武術を全裸で披露し夢を語るフェルミンにあまりよくはわからないですが、大変な毎日で若いクレオは自分に女性として関心を抱いてくれるフェルミンに惹かれて行き体を重ねます。
後日クレオに妊娠の兆候が現れると、そのことを映画館で映画を観ているときにフェルミンに打ち明けます。しかし一瞬喜んだようなリアクションでしたが、トイレへ行くと言ってそのまま行方をくらましてしましました。
心配はそれだけではありません。もし妊娠が発覚したら仕事を失ってしまうかもしれません。しかし、隠しておくことはできないのでソフィアに妊娠したかもしれないことを打ち明けます。そしてクビになりますか?と聞いてみます。
するとソフィアは「クビなんてとんでもない。でも、病院で診断してみなくてはね。」と後日ソフィアの運転で病院へ行きます。
結果としては妊娠三ヶ月でした。ソフィアは知り合いの医者と何やら立ち話をしていて、新生児室を見てくれば?と言ってきたので三階の新生児室に行って他人の赤ん坊を見ていると急に大きな地震が起こります。崩れた天井のかけらが保育器に落ちてきますが、病院の赤ん坊たちは難を逃れます。
一方ソフィアの方は夫が出張から戻ってこないのは長引いているからだというのは子供に対する建前で、夫が浮気をしているということをつかんでいました。しかしそれを子供たちに悟られまいと伏せていました。
夫は戻ってきませんが新年が近づいていたので、親戚同士の集まりが田舎の農場で開かれます。そこへ子供たちとクレオを連れて出かけます。そこにも原住民系の家政婦がいてクレオとも顔なじみで、妊娠したことを祝ってくれました。
ソフィアの夫婦関係はすでに親戚の中で伝わっていて、酔っ払ってソフィアに近づいてくる男性もいましたがそれを拒否しました。
その夜山火事が起こりましたが、それも祭りの一部のような騒ぎでした。
一家は自宅に帰ってきましたが、夫は不在のままお金の心配も出てきました。夫は仕送りもしなくなっていたのです。そのことを隠れて電話で話していると部屋の外では次男のパコが盗み聞きしていました。それをみたソフィアはパコを平手打ちし近くにいたクレオになぜ立ち聞きさせたの?と叱責します。そしてパコには他の兄弟には秘密にするように言います。
クレオは生まれてくる子供を一緒に育てて欲しいという思いがあったのか、フェルミンの居場所をラモンから聞き出し、武術訓練の場所まで行きます。
訓練が終わるとフェルミンにあなたの子供がもうすぐ生まれるのよと伝えます。
しかしフェルミンはそんなわけないと取り乱し、「俺の元から去らないと、お前も子供も殺す」と恫喝します。
仕方なくクレオは家に戻ってきます。
出産予定日が近づいてきたクレオは祖母とベビーベッドを見にやってきます。
街ではデモが行われていて、とりわけその日のデモは激しいように見えます。
すると、家具店に突然逃げ込んできた人がいて後ろから追ってきた青年たちに射殺されました。
そして銃口クレオたちにも向けられます。拳銃を持っていたのはフェルミンでした。フェルミンはその場を去りましたが、そのショックでクレオは破水してそのまま病院に担ぎ込まれました。
主治医が到着し、そのまま分娩室に運び込まれますがお腹から子供の心音が聞こえません。それでも赤ん坊を取り出すと心停止した状態でした。
緊急蘇生術を施しますが、その甲斐なくそのまま赤ん坊が泣きだすことはありませんでした。
しばらくクレオは赤ん坊を抱かせてもらいましたが、引き離され赤ん坊は白い布で包まれました。
後日家に戻ったクレオは死産だったショックで、部屋で意気消沈しています。
周りも気を使って声をかけるのですが、心ここに在らずといった様相です。
するとソフィアがコンパクトな車で帰ってきました。
駐車スペースがギリギリの幅の夫のギャラクシーを売り飛ばして、新しくこの車にしようと言いました。そして売る前にギャラクシーに乗って最後の旅行に出かけようと言い出しました。
そして、クレオに休暇ということで一緒に家族として旅行に行こうと提案しました。最初は渋っていたクレオですが、子供たちに一緒に行こうとせがまれたので一緒に行くことに決めました。
海に着くと子供たちははしゃいで遊びまわり、ました。娘のソフィはクレオにも海へ入ろうとせがみますが、クレオは泳げないので近くで見ていると言いました。
その夜はレストランに皆で行きました。
食事の最後にソフィアがお父さんはもう帰ってこない。この旅行もお父さんが自分のものを家から持ち出している間、家に誰もいないようにするために企画した旅行だということを打ち明けました。そして、お母さんは働きに出るし、みんなで頑張ろうと明るく宣言します。
子供たちはショックを受け、落ち込みながらアイスを食べている横では結婚式が行われています。
翌日は旅行最終日です。子供たちはまた海に来てはしゃいでいました。
ソフィアは車を点検するために長男と車の場所まで行くので、波打ち際までしか行っちゃダメよと言いつけ二人でビーチを離れます。
末っ子のぺぺは少し離れたところに戻ったのでクレオも少し海から離れると、パコとソフィは言いつけを破り沖へ行って波に飲まれてしまいます。
クレオは泳げませんが、歩いて助けに行きます。波に飲まれる三人が姿を消します。


しかし、また三人は姿をあらわしなんとか岸までたどり着きました。異変に気がついたソフィと長男、ぺぺが駆け寄り全員で抱きしめ合います。
その時クレオは「生まれてこないで欲しかったの」と初めて本心を打ち明けます。ソフィアは「私たちクレオが大好きよ」となんども言い家族は抱きしめ合いここに絆が深まりました。
家に帰ると、本棚が消えて中に入っていた本が床に山積みにされています。
クレオに助けてもらったことを子供たちは祖母に話し、部屋が変わったとはしゃぎます。
クレオは自分の部屋に荷物を運び、またいつもの日常が始まります。

死の匂いを連想させるカット

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映画.comより引用

全編白黒のモノトーンでとても美しい映画なのですが、時折死を連想させる不吉なカットが入ります。
冒頭パコとぺぺがおもちゃの銃で撃ち合いをしていると、ぺぺが打たれたと言って死んだふりをします。それに合わせてクレオも仰向けに横たわって死んでいるのも悪くないわねというシーンがあります。
また、新生児が地震に遭って保育器に破片が散らばるシーンの後に3つの墓標がアップになるシーンがあります。
これはその後の悲劇につながることを連想させます。
さらに海のシーンでは波に飲まれるのが三人だったので、本当に怖かったです。助かって本当に良かった!

飛行機が上空を飛んでいるカット

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映画.comより引用

飛行機がゆっくり上空を飛んでいるカットというのもいくつかありますね。
最後のシーンに「リボへ」という文字がクレジットされますが、これは監督が少年時代に家で家政婦をしていたリボという女性で、クレオのモデルとなった女性です。
この女性はもうご存命ではないようなので、天国にいるリボさんへお手紙を出しているイメージなんじゃないかなと思っています。

基本的に男はクズな描写が多い

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imdbより引用

基本的に、子供の視点で描かれている映画なのでいつも自分たちの相手をしてくれたり、世話を焼いてくれるのは女性たちで、男たちは好き勝手やっていばり散らしている怖くて嫌なやつという子供的な視点で描かれているのが面白いですね。
まあ、フェルミンがやることは笑えないしとてもひどいですけどね。

辛いことがあっても世界は続いている

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imdbより引用

印象的なのがこのシーンで、一家離散の話をしている主人公たちの傍らでは二つの家族がくっつく結婚式をやっているという描写です。
本人たちが喜ぼうと悲嘆に暮れようと世界は勝手に続いていくという描写ですね。こういう表現はすごく好きですね。

中絶という選択がなかった理由

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imdbより引用

これに関してあれ?ってちょっと思ったのが、少しも中絶という話が出てこなかったからなんですが、調べてみるとメキシコって人工中絶が違法なんですね。だから選択肢としてすら出てこなかったという。。
レイプ被害者の中絶は大丈夫になったみたいなんですが、それも最近みたいでそういう話を聞くといろんな考え方があるんだなと思いますね。

関連

アカデミー賞では外国語映画賞を争いましたね。

 

アルフォンソ・キュアロン監督の作品ですがIMAXで観たい作品ですね。

 

カメラの動きとか似てる気がするんですよね。

 

 

まとめ

これ、絶対劇場で観たいやつですね。また自分にとって大事な映画が増えました。

オススメ度

(★★★★★)5/5

こんな人にオススメ

・白黒映画が好きな人
・ノスタルジーに浸りたい人
・子供時代の大事な人を思い出したい人

映画「THE GUILTY ギルティ」感想

映画「THE GUILTY ギルティ」感想

電話の向こうの音だけで推理するワンシチュエーションサスペンスです。まずネタバレ読まずに映画を観てください。

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作品データ

原題 Den skyldige 製作年 2018年 製作国 デンマーク 配給 ファントム・フィルム 上映時間 88分 映倫区分 G

スタッフ

監督 グスタフ・モーラー
製作 リナ・フリント
脚本 グスタフ・モーラー エミール・ナイガード・アルベルトセン
製作総指揮 ヘンリク・ツェイン
撮影 ジャスパー・J・スパニング
編集 カーラ・ルフェ
音楽 オスカー・スクライバー

キャスト

ヤコブ・セーダーグレン アスガー・ホルム
イェシカ・ディナウエ イーベン
ヨハン・オルセン ミカエル
オマール・シャガウィー ラシッド

解説

電話からの声と音だけで誘拐事件を解決するという、シンプルながらも予測不可能な展開で注目され、第34回サンダンス映画祭で観客賞を受賞するなど話題を呼んだデンマーク製の異色サスペンス。過去のある事件をきっかけに警察官として一線を退いたアスガーは、いまは緊急通報指令室のオペレーターとして、交通事故の搬送を遠隔手配するなど、電話越しに小さな事件に応対する日々を送っている。そんなある日、アスガーは、今まさに誘拐されているという女性からの通報を受ける。車の発進音や女性の声、そして犯人の息づかいなど、電話から聞こえるかすかな音だけを頼りに、アスガーは事件に対処しなければならず……。

映画.comより引用

予告編

[鑑賞データ]

2/22(金)20:20 ユナイテッドシネマとしまえんにて字幕版を鑑賞しました。

客席は8割くらいでした。

テーマ「誰の罪か」

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映画.comより引用

 

hulu

ネタバレあらすじ・感想

昨年観た「Seach」のような感じで、警察の緊急緊急通報指令室の電話オペレーター室のみで描かれるワンシチュエーションサスペンスでした。
サーチの僕の感想はこんな感じです。

 

※基本いつも通りネタバレ全開スタンスですが、この映画のどんでん返しの性質上、オチを知ってしまうとこの映画の魅力が半減してしまうので、この映画をこれから観ようと思っている人は映画を観てから読んでください。



ネタバレあらすじ

お話は仕事上のトラブルで現場からは外されて、ペナルティ的な意味合いで電話オペレーターの職場に回されている主人公の警察官アスガー(ヤコブ・セーダーグレン)。
ほとんどがしょうもないことで電話をかけてくる酔っ払いや、頭のおかしい奴の相手も明日になれば相棒の証言でまた第一線に戻れるはずの最終日のことです。
あと少しでこの職場での仕事も終わりというときに受けた電話は、イーベンと名乗る女性からの電話で、誘拐されている真っ最中の電話でした。
イーベンは子供と会話をしているふりをして電話を続けて、なんとか情報をアスガーに伝えます。
携帯電話の基地局からおおよその位置は掴めるのですが、完全にはわからないため付近を管轄する署に電話をかけて急行できるように情報を伝えますが、管轄の担当官は極めて事務的です。
またイーベンとの会話に戻り、話の流れから、連れ去ったのは夫のミケルということがわかってきます。
ミケルには犯罪歴があり、イーベンとは別居していました。
イーベンの住所を見つけることに成功したアスガーは、家に電話してみると小さな女の子が電話に出て父親ミケルが母親イーベンを連れ去ったことを告げます。
さらに小さい弟がいることがわかったので、警官が来るまで弟のそばにいるように女の子に言います。
現場へ警官を向かわせ無事イーベンの娘を保護しますが、奥の部屋へ踏み込むと惨殺された弟の遺体を発見しました。
ミケルには誘拐容疑に加え殺害容疑も加わることになりました。
さらにミケルの家もわかったので、前線にいたときの相棒ラシッドに向かわせます。
ミケルの家に着くと中はもぬけの殻です。ラシッドに中を捜索するように依頼しました。
遺体が見つかったことで自体はより深刻になりました。イーベンを一刻でも早く救出しなければならないと感じたアスガーは、車が高速走行中であることを確認するとシートベルをしてサイドブレーキを引くことをイーベンに実行させます。
電話が途切れましたが、数分後泣きながらイーベンからの着信が入りトランクに押し込められたということを伝えられます。事態は切迫しています。
ラシッドからの着信で、イーベンが精神病院に入っていたことがわかります。そして二人を乗せた車はその方面に向かっていることがわかります。
今度はイーベンに武器を探すようにいうとトランクにレンガがあることがわかりました。そこで、そのレンガを使ってトランクが開いた瞬間攻撃して逃げるように言います。
車が止まりトランクが開かれイーベンは実行します。
又しばらく通話が途切れます。
しかし衝撃の事実が判明します。子供を殺し、母親まで殺そうとしていた夫というのはアスガーの思い込みでした。
実際子供を殺したのは精神を病んでいたイーベンで、元夫ミケルは子供を残された子供を守るためイーベンを再び精神病院に入れようとしていたのです。
次に繋がった時にはイーベンは一人で陸橋の上でした。今まさに飛び降りようとする時にアスガーは自分の秘密をイーベンに告白します。通話は再度途切れますが、イーベンを保護した警官から無事であることを告げられます。
アスガーは皆に本当のことをいうことを決意しました。

主人公に向けられる意識づけ

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映画.comより引用

観客は映画を見る際に、主人公は善玉であるという固定観念を持って観ることが多いと思います。
だから、今回のような映画で観客はアスガーとイーベンに肩入れして観てしまいがちですが、実際はアスガーもイーベンも精神に問題を抱えています。
ただ、観ているとアスガーはかなり短気な人物であることがわかる描写が多々ありますし、同僚には横柄な態度をとっています。
観客はアスガー視点でこの映画を観ることになりますので、管轄の電話オペレーターの態度も冷たい印象を受けますが、よくよく考えてみれば事態に冷静に対処しようとしているのは先方で、こちらはイライラしたり、私情をはさみまくっているので問題があるのは明らかにアスガーということになります。
あと、人質に「サイドブレーキを引け」とか「レンガで攻撃しろ」とか多分実際の現場では絶対あり得ないですよね笑
視点によってキャラクターが与える印象が変わるというのはこの映画を観ていて面白いところですね。

固定観念を利用したシナリオ

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映画.comより引用

これもそうなんですが、基本的に家庭内の問題は男の方が起こすものというイメージが引き起こす思い込みってどうしてもあると思います。しかもこの映画の話は前科持ちの夫ですからね。
でも、世界はそんな単純じゃないし如何に思い込みや決めつけが良くないかがわかりますね。

関連

電話でずっとやり取りするというワンシチュエーションものだと、ストーリーは全然違いますがこの映画も面白いですよ。こっちは棺桶の中ですけどね。ライアン・レイノルズが出てるのもポイントです。

 

こっちはスリラーですね。

 

北欧映画のサスペンスでこれも面白いです。バディもので推理ものですけどね。

 

 

まとめ

ワンシチュエーションで時間もタイトなので観やすいサスペンスだったと思います。日本でもこんな映画結構量産してほしいですね。

オススメ度

(★★★★)4/5

こんな人にオススメ

・サスペンスが好きな人
・会社に秘密を持っている人
英語圏以外の面白映画を探している人

映画「女王陛下のお気に入り」感想

映画「女王陛下のお気に入り」感想

かなりブラックなコメディ映画にして実話ベースの貴族の話です。実際の政治の世界もこんな奴らばっかんだろうなぁ。

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作品データ

原題 The Favourite 製作年 2018年 製作国 アイルランド・イギリス・アメリカ合作 配給 20世紀フォックス映画 上映時間 120分 映倫区分 PG12

スタッフ

監督 ヨルゴス・ランティモス
製作 セシ・デンプシー エド・ギニー リー・マジデイ ヨルゴス・ランティモス
脚本 デボラ・デイビス トニー・マクナマラ
撮影 ロビー・ライアン
美術 フィオナ・クロンビー
衣装 サンディ・パウエル
編集 ヨルゴス・モブロプサリディス

キャスト

リビア・コールマン アン女王 エマ・ストーン アビゲイルヒル レイチェル・ワイズ レディ・サラ(サラ・チャーチルニコラス・ホルト ロバート・ハーリー ジョー・アルウィン サミュエル・マシャム ジェームズ・スミス ゴドルフィン マーク・ゲイティス モールバラ卿(ジョン・チャーチルジェニー・レインスフォード メイ

解説

「ロブスター」「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」で注目を集めるギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督が、18世紀イングランドの王室を舞台に、女王と彼女に仕える2人の女性の入り乱れる愛憎を描いた人間ドラマ。2018年・第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で審査員グランプリを受賞し、女王アンを演じたオリビア・コールマンも女優賞を受賞した。18世紀初頭、フランスとの戦争下にあるイングランド。女王アンの幼なじみレディ・サラは、病身で気まぐれな女王を動かし絶大な権力を握っていた。そんな中、没落した貴族の娘でサラの従妹にあたるアビゲイルが宮殿に現れ、サラの働きかけもあり、アン女王の侍女として仕えることになる。サラはアビゲイル支配下に置くが、一方でアビゲイルは再び貴族の地位に返り咲く機会を狙っていた。戦争をめぐる政治的駆け引きが繰り広げられる中、女王のお気に入りになることでチャンスをつかもうとするアビゲイルだったが……。出演はコールマンのほか、「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーン、「ナイロビの蜂」のレイチェル・ワイズ、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のニコラス・ホルトほか。

映画.comより引用

予告編

[鑑賞データ]

2/20(水)20:15 シネクイントにて鑑賞しました。

客席は7割くらいでした。

テーマ「三角関係」

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映画.comより引用

 

hulu

ネタバレあらすじ・感想

アカデミー主演女優賞おめでとうございます。

 

近世のグレートブリテン王国最初の女王であるアン(オリビア・コールマン)と女王を取り巻く二人の女性アビゲイルエマ・ストーン)とサラ(レイチェル・ワイズ)の三角関係の物語で、正直この映画を観るまでイングランドとその周辺諸国に関する歴史なんて、全く知らなかったのですがwikipediaとかがっつり読んでみるとかなり興味深いです。それも含めてとても面白かったですよ〜。



ネタバレあらすじ

お話は1710年ごろの話でグレートブリテンスペイン継承戦争でフランスと争っている時代です。
アン女王は、唯一信頼を置ける幼馴染サラに政治を任せて、自分の運命や容姿を嘆いて暮らしていました。
このころ、宮殿内では意見を異にする政党が二つありました。
一つは与党で戦争を継続させたいシドニーゴドルフィン大蔵卿(ジェームズ・スミス)が率いる「ホイッグ党」。サラとその夫モールバラ卿(マーク・ゲイティスが演じるグレートブリテン軍の大将軍)はこの政党の支持者です。
もう一つは戦争をやめさせたい野党で、ロバート・ハーリー(ニコラス・ホルト)が率いるトーリー党で、どちらかといえばアン女王はこちらを支持しています。
アンは唯一嘘がなく手厳しく叱りつけてくるサラに信頼を寄せますし、二人は一見友情があるように見えますが、サラは言いなりになるアンのそばにいるのが都合が良いのです。
そこに、サラの従妹で家が没落してしまったアビゲイルが、宮殿での職を求めてやってきます。
地位があるサラは、あまりアビゲイルと関わり合いになりたくないらしく女中の仕事を与えます。
女中の女たちは没落貴族に辛く当たりますが、アビゲイルはすでに身を売られるなどこれまでも酷い目にあってきたので、それくらいではへこたれず成り上がるという野心があります。
ある日の夜中に痛風の発作でアンが苦しみます。サラは看病をしますがアンは苦しみ続けます。
これを好機と捉えたのがアビゲイルでした。馬に乗り薬草を採りに行くとそれを煎じて女王の寝室に忍び込み、アンの脚に塗ったのです。
しかし、その様子をサラに見つかってしまい、女中長に鞭打ちを命じられてしまいます。
寝室ではアンがベッドに横たわったまま会議が開かれましたが、アンが「脚に塗ったものが効いた」と言い出します。
すぐさまサラはキッチンへ向かい、鞭打ちをやめさせアビゲイルに部屋を与えました。
その日から、サラはアビゲイルに宮殿で使えるレディとしての嗜みを叩き込んでいき、アビゲイルはそれに答えサラの信頼を勝ち取っていきます。
ある日宮殿ではパーティが開かれました。
サラを始め、きている人々はダンスを楽しみますが、アンは車椅子で立てずダンスができません。突然喚き出すとパーティはお開きとなりサラは書庫へ女王を連れて行き二人きりになりました。するとやおら二人はまぐわい始めたのです。しかし、その部屋には本を読んでいたアビゲイルが息を殺して潜んでいました。アン女王とサラの秘密を知ってしまったのです。
本を片付けられないので、本を持ったままこっそり部屋を抜け出すと本を無断で持ち出したと勘違いしたハーリーに見つかってしまい咎められてしまいます。
ハーリーは、そのことを言わない代わりにアン女王とサラの情報をよこせと脅してきますが、アビゲイルはこれを拒否します。
翌日アビゲイルがサラの射撃のお供をしているときに、ハーリーから裏切りを打診されたことを話すと、サラは毅然とした態度でアビゲイルに対峙します。
この時から、アビゲイルは完全に信頼を置けるものがこの宮殿にいないことを悟り、自分の立ち位置を守るように行動し始めます。それはまず女王という後ろ盾を作ることでした。
そっけない態度でアンとウサギに接するサラと違い、ウサギが17匹いる理由を聞いたときに同情して見せ、アンと一緒にウサギを可愛がったり夜のお供もサラ以上のサービスをしました。
サラには内緒で進めていましたが、ある夜アンのベットで女王と寝ているところをサラに見つかり、翌朝現在の地位から解雇することを宣告されてしまいます。
しかし、すでに女王にとり入ることに成功していたアビゲイルは女王に泣きつき、地位を守ります。
翌日小旅行に行くアンをサラが見送ろうとすると、そこに解雇したはずのアビゲイルがいるのを見て女王に詰め寄りますが、女王の権限で解雇にしないということを告げます。
嫉妬したサラは旅行についていき、さらに詰め寄ると二人が自分のために争っているというのに優越感を感じたことを認めます。
しかし、アンは旅行中はサラと親しく過ごしました。サラにはアビゲイルには無い積み上げてきた年月という強みがあります。
旅行中のアンの態度を見て、このままでは負けると実感したアビゲイルはサラと政治信条を異にするハーリーと組むことを決めます。敵の敵は味方です。
後日の議会で、ハーリーはアビゲイルから得た情報を元に不意打ちをします。女王とサラで税を2倍にあげようとしていたという情報を逆手にとり、議会の冒頭で「戦争の終了まで税を引き下げることに礼を言う」という嘘をつくことで既成事実のように見せる芝居をしたのです。議会は大いに沸き立ちます。
もともと政治に興味がなく、サラに任せきりにしていたアンは事態を収拾することができずに卒倒してしまいます。
議会は緊急閉会し、その混乱に乗じてアビゲイルは毒草を摘みに行きます。そして女王の寝室で、三人でお茶を飲んでいる時にサラのお茶にその毒を混ぜます。
毒はすぐに効果を発揮し、サラはそれを悟られまいと馬に乗って森に逃げ込みましたが毒が回って落馬してしまい、さらに馬に引きづられて気を失ってしまいました。
サラの行方が分からなくなって、周囲のものは捜索を出しましょうと進言しましたが、女王は内心嫉妬させようとしていると思い込み捜索を出すことを許可しません。
アビゲイルは死を確信していましたが、その間にサラが手にしていたものを乗っ取る作戦に出ます。
まずアビゲイルに好意を寄せていたハーリーの部下のメイシャムと結婚し、貴族の地位に復帰します。
そして、もともとアンがホイッグ党をあまりよく思っていなかったのを利用し、ゴドルフィンを失脚させてハーリーのトーリー党を与党にします。
その頃サラは娼館の男たちに助けられ、一命をとりとめていました。これは善意からではなく、娼館の人々が一儲けしてやろうと思って助けただけのことでした。
アンはハーリーにより戦争を終結させようとしていましたが、今まで自分一人で決断を下したことはなくサラに決定してもらっていたため、急に不安に襲われサラの捜索を出すことにしました。
サラは娼館で働かされそうになっていましたがなんとか救出され、顔に大きな傷を負いますが宮殿に戻ってきます。
しかし、時はすでに遅くアビゲイルとハーリーが政権を掌握している状態でした。
なんとかパワーバランスを自分に引き戻さなければならないサラは、戦争を継続することや税を引き上げることの必要性やアビゲイルを遠ざける必要があることをときます。
そして非常手段としてそれが叶えられない場合、アンからサラ宛に送られた性的な言葉も綴られている愛の手紙を公開すると脅します。
部屋を去った後サラは後悔に駆られ、その手紙を燃やしますが、この出来事が決定的な亀裂となってしまい。サラは宮殿を追われます。
それに追い打ちをかけるようにサラの夫モールバラ卿の横領疑惑をでっち上げます。
それでもアンはサラに情が残っていて、手紙を書くことは許します。
ホイッグ党を再興させたいゴドルフィンはサラにアンへの手紙を書いて説得することを勧めます。
サラは手紙を書きますが、アビゲイルがそれがアンに届くことを阻止し続けます。
ついに横領の罪でサラ、モールバラ卿夫妻は国外追放とし袂を分かちます。
そして確固たる地位を手に入れたアビゲイルですが、女王の寝室でウサギを踏みつけているのをアンに見られてしまいます。
全てを悟ったアンは悲痛の表情でアビゲイルをひれ伏せさせます。アビゲイルも何かを悟ったように従いそこでお話は終わります。

現代にも通じる秀逸なストーリー

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映画.comより引用

人間関係で、ここまで全ての人物が自分のことしか考えていないというのは政治の世界ではおそらく常にあるんでしょうね。
一見政治家たちの行動も国のため、民衆のためというお題目はありますが、自分の地位を守るためというのが第一に来ている人物描写はブレがありません。
アンは人から愛されたいという強い欲望と女王としてのプライド、虚栄心。サラはコントロールフリークで最高権力者を裏から操っているという自尊心。アビゲイルは掃き溜めからの脱却と、もう二度とその掃き溜めには戻りたくないという執着心。それぞれのキャラクターがしっかりわかります。
さらにその3人以外にもハーリーは国のためとか民衆のためとかいう綺麗事のお題目を掲げていますが、それはいい人だからではなく野党である自分が与党になるため、現在与党がとっている政策への対抗意見でしかありません。
このように、権力を奪い合う人間同士も醜くも滑稽な様子が見事に描かれていました。
これって、古今東西政治の現場で行われていると思うとゾッとしますね。

気の毒なアン女王

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映画.comより引用

うさぎが17匹いる理由はアンが妊娠して流産したり若くして亡くなってしまった子供の数という告白が劇中なされます。
容姿も美しくなく、体も弱く、太っていて、政治にも興味がなくただ生まれついた家のため女王になってしまった哀れな女性です。幼馴染の完璧な女性であるサラが自分に心を開いてくれただけで憧れ、依存してしまうのは仕方ないことなのかもしれません。
ここまで自分を卑下していないでしょうが、韓国のパク・クネ前大統領とチェ・スンシルの関係と似ていますね。
アンを演じたオリビア・コールマンはキャラクター付けにドナルド・トランプを参考にしたそうですが、可笑しいけどある意味笑えないですね。

超ゴージャスな美術と音楽

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映画.comより引用

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映画.comより引用

宮殿内の豪華絢爛さや、女たちの衣装、男たちのバカみたいに荒唐無稽で虚栄心に満ちた衣装など、なんなんだこの空間は?と開いた口が塞がらないような美術に加えて、それを映し出すカメラが超広角だったり、魚眼レンズだったりして本当に不思議の国に迷い込んだ感がよく出ていました。
ちょっと病的なタイポグラフィの揃え方もかっこよかったですね。宮殿をイメージしてるのかな? そして音楽も目の前で起こっている滑稽で間抜けな現実を優雅に彩っていて、ゴージャスなバカっぷりが際立っていて良かったです。
あと、こんなダンス当時ないだろ?っていう振り付けで踊っていたのも可笑しかったです。

関連

ヨルゴス・ランティモス監督の前作ですが、これ面白かったですよ。

 

権力闘争といえばこのドラマっすかね。

 

これもヨルゴス監督の作品ですがサラ役のレイチェル・ワイズが出ています。これも面白かったです。

 

まとめ

とても笑えるコメディであり、よくできたストーリーで多面的に観ることができるいい作品でした。せめて日本の政治家はちゃんと選ばないとなぁ。

オススメ度

(★★★★★)5/5

こんな人にオススメ

・ドロドロした話が好きな人
・宮殿の内部とか見たい人
・政治に全く興味がない人